THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2026年10月

3週間前のブログで、米国のテスラとウェイモが日本で自動運転を展開するという話題を取り上げましたが、これらに対する日本の自動車メーカーの回答ではないかと思いたくなるような発表が、先月17日ににありました。自動車メーカーの団体である日本自動車工業会(自工会)の定例記者会見で、自動運転がテーマとして選ばれたのです。

内容については、自動車専門ウェブメディア「webCG」でコラムにしているので、気になる方はお読みください。当日は自工会が定めた「新7つの課題」のひとつである「自動運転を前提とした交通システム確立」について、「事故死ゼロ」「移動の自由」という2つの目標を掲げました。注目は前者について、究極の目標は事故ゼロであるけれど、まずは事故死ゼロを目指していくと言っていたことです。

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日本自動車工業会の記者会見の内容はこちら

とても現実的な判断だと思いました。これまでもブログで書いてきたことですが、日本は現在、年間約2500人が交通事故で亡くなっているのに、それより軽微な自動運転車の事故を大きく扱う傾向があったからです。もし事故ゼロという目標を立てたら、なにかと完璧を求めミスを許さない今の日本の風潮では、軽い物損事故を起こしただけでもプロジェクトがストップする可能性があります。

自工会でも当面は、自動運転は自家用車より、ロボタクシーを含めた移動サービスから推進していくようです。移動の自由を目標のひとつに掲げたのはを立てたのはそのためでしょう。しかしそれが軽微な事故で途絶えてしまっては、移動の自由の実現が遠のくだけでなく、技術の蓄積が無駄になってしまうわけで、損失が大きすぎます。その点でもまず事故死ゼロという目標を掲げたのは感心できます。



もちろん現時点で、一部の自動車メーカーは事故死ゼロを掲げています。しかし個人的には、有人運転では目標達成は難しいと思っています。警察庁が発表した今年上半期の交通事故統計を見ても、飲酒運転による死亡・重傷事故数は横ばいで、スマートフォンなどを使ったながら運転に至っては増え続けているからです。

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飲酒運転やながら運転が原因の事故は、ドライバーの過失ではなく、故意によるものだと考えています。どんなに車両側の技術を高めても、こうしたドライバーがいる限り、事故死ゼロにならないことは明白でしょう。それを考えれば、人間が運転しない自動運転は有効だし、ながら運転の罰則を飲酒運転並みに引き上げるなどの対策を行わないと、目標はますます遠のいていきそうな気がします。

海外に目を向けると、技術以外の手段を使って交通事故死ゼロに取り組んだ都市があります。代表格がノルウェーのオスロとフィンランドのヘルシンキで、ともに国の首都であるにもかかわらず、1年間交通事故死者ゼロを達成した経験があります。人口はいずれも70万人ぐらい。日本では岡山市や熊本市に近い規模であることを考えると、驚くべきことです。

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この内容は最近講演でも話したのですが、一部区域の自動車進入禁止や駐車場数削減、歩道や自転車レーンの拡充、多くの道路への時速30キロ制限導入、公共交通網の強化などにより達成したそうです。つまり車両側の技術は関係ありません。そもそもノルウェーもフィンランドも自国に自動車メーカーがないので、インフラ対策に注力したのかもしれませんが、それで事故死ゼロを達成したことに注目していただきたいと思います。

いろいろな角度から交通事故死ゼロを考えると、車両とインフラの双方を協調させながら取り組んでいくことが大事であると感じるし、技術の進化という足し算的な対策だけでなく、取り締まりの厳格化や、北欧が実践している規制強化のような引き算の対策もまた重要になりそうです。「押してもダメなら引いてみな」的な、臨機応変な対策が求められるような気がします。

今週月曜日、台風25号で被害を受けた千葉県袖ヶ浦市で仕事があり、自動車で行く機会がありました。テレビでは印旛沼の堤防決壊による周辺の浸水や、JR東日本内房線の土砂崩れをひんぱんに放送していますが、今回房総半島に踏み入れると、あまり報道されていない部分でも、さまざまな交通障害があることを身をもって知ることになりました。

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目的地は「房総横断道路」と呼ばれる国道409号沿いのサーキットで、通常は東京湾アクアラインから圏央道(首都圏中央連絡自動車道)に入って木更津東インターチェンジで降りたあと、国道410号〜409号と進むのですが、この409号がサーキットの両側で通行止め。直前の案内では、館山自動車道を使って市原インターチェンジまで北進し、そこから南へ下って行くと、通行止め区間の間に出ることができるとのことでした。

私は内房線の不通区間を横目に見ながら北上し、内陸部から小湊鐵道上総牛久駅に向かい、そこから目的地を目指そうとしましたが、上総牛久駅からサーキットまでの409号だけでなく、市原市中部を縦断する市道「うぐいすライン」など、あちこちで道路が寸断されていました。しかも多くの道路情報は、国道と県道に限っているようで、うぐいすラインは行ってみて初めて通れないことを知りました。あとで調べると市原市の情報のみ通行止めとなっていました。そういう道路は他にもあるようでした。

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土砂崩れや路面陥落などによる道路の通行止めは、鉄道にも影響を及ぼしています。小湊鐵道は現在、上総牛久駅と上総中野駅の間が運休となっていますが、並行する道路も通れないうえに、停電や断水などもあり、被害の全貌把握に時間を要しているとのこと。復旧作業をするにしても作業用車両が入れず、代行バスの運行もできない状態が続いているようです。

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たしかに印旛沼の堤防決壊や大規模な浸水、JR内房線の土砂崩れと代行輸送のほうが、インパクトはあるし、ビジュアルも強いでしょう。それに比べると道路の通行止め現場は人里から離れたところが多く、被害状況は訪れてみないとわかりません。しかし台風の被害は、印旛沼と内房線だけではなく、房総半島内のあちこちで道路が寸断され、地域生活に大きな影響を及ぼしているのが事実です。

そんな中、千葉県では昨日、国道および県道の被害状況と復旧予定を公開しました。国道409号はサーキットに向かう区間が大規模な路面崩落を起こしており、復旧の見込みが立たないとのこと。この区間の1日の交通量は1万台以上に達するそうです。ほかにも1日1万台レベルの道路が10か所ほど通行止めになっており、復旧見込みが立たない大規模な被害は約30か所を数えます。

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千葉県の県管理道路に関する報道発表はこちら

たしかに内房線は、東京都心への直通列車も走っており、東京湾アクアラインともども、地域の幹と言えるでしょう。しかし日々の生活には、大小の枝である道路網が欠かせないことを、現地を走って実感しました。被災者に寄り添ったメディアであるためにも、こういった部分の被害にも目を向け、多くの人に伝えてもらいたいと感じたのでした。

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