明日7月10日は参議院議員選挙の投票日ですが、滋賀県では同じ日に県知事選挙の投票も行われます。この県知事選の争点のひとつに、再選を目指す現知事が提案した「交通税」があります。本件について書いた記事がウェブメディア「ビジネス+ IT」で公開されたこともありますので、投票日直前ではありますがこのテーマを取り上げます。

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滋賀県が交通税を提案したのは、県内を走る近江鉄道の鉄道部門が理由だと言われています。近江鉄道は2018年に単独での運行維持が難しいと表明。これを受けて滋賀県では協議会を設立し、2024年度に上下分離を行うことで存続という結論を出しました。ところが新型コロナウイルス感染症によって事態がさらに悪化。上下分離だけでは不十分ということで、交通税に至ったようです。

交通税は滋賀県が勝手に考え出した概念ではなく、海外に先例があります。有名なのはフランスで、1970年代から存在しています。これ以外の欧米諸国も税金や補助金主体の運営を行っており、ドイツやアメリカではガソリンなどに掛かる税金を原資としていることも紹介しました。日本では考えられないかもしれませんが、自動車運転者が公共交通を支えているのです。

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今回の県知事選で注目したのは現職候補が、新しい税を作るという、多くの有権者にとってネガティブであり、故に多くの政治家が避けてきた話題を、あえて出してきたことです。当然ながら対立候補は導入反対を謳っています。県民の中にも反対する人は多いでしょう。それでも交通税を出してきたのは、公共交通が危機的状況にあるからだとと思っています。

滋賀県独自での導入も考えているでしょうが、本音は国全体で地域交通の危機を打開する議論に発展させていきたいのではないでしょうか。つまり今年4月、JR西日本がローカル線の情報開示を行ったのと、同じ気持ちではないかと思っています。



では同じ滋賀県で参院選を戦う候補者はどう考えているのか。京都新聞が滋賀県選挙区の5候補に、交通税の是非、交通渋滞の現状の2点について質問した記事がありました(インターネット記事は登録すれば無料で読むことができます)。それによると交通税については、ひとりが議論と理解が必要と答えた以外はすべて反対でした。一方交通渋滞対策は全員が進んでいないと回答しています。

交通税の制度を誤解している候補者、県内に住んでいないので渋滞はわからないという回答もありました。国の財源確保が重要と、他人事のような意見も見られました。交通税を導入するかはさておき、税金や補助金で公共交通を支える仕組みを作ることで質を上げれば、渋滞緩和の可能性もあるのに、立法府を目指す身でありながら具体的な提案はなく、反対するだけという候補が大多数であることに唖然としました。

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100人いれば100通りの考えがあります。約140万人が暮らす滋賀県で、全員が満足する政策を作ることなど困難です。フランスをはじめとする欧米の公共交通改革は、一部の人たちに負担を受け入れてもらうことで、全体として好ましい姿を生み出すことができました。耳障りの良い言葉に惑わされることなく、本当に政策を作り、社会を良くする力があるのか、そこまで見極めて投票すべきなのだと思い知らされました。