先月初めのブログで、自家用有償旅客運送制度を活用した小松市のライドシェアを取り上げた際に、タクシー会社が運営主体となるもうひとつのライドシェア、つまり自家用車活用事業(日本版ライドシェア)について、計画に動きがあったことを書きました。具体的には、当初は6月をめどとしていたタクシー事業者以外の参入解禁について、タクシー業界から不満が根強く、解禁が延期になったということでした。

IMG_5555

これを受けての動きかどうかはわかりませんが、来年大阪・関西万博が開催される予定の大阪府で、ライドシェアアプリ会社や鉄道会社がタクシー会社の株式を取得して経営に乗り出すという動きが相次いでいます。

まずは今年1月にメルカリ出身者などによって設立されたライドシェアアプリ会社newmo(ニューモ)です。同社は3月に、岸和田交通グループの岸交に資本参加すると、7月にはタクシー車両約600台を保有する未来都(みらいと)の全発行済株式を取得し経営権を取得し、府内で第5位のタクシー事業者に浮上。今月12日には、前述した岸交と共同で、大阪市などでライドシェアの正式運行を開始しました。

スクリーンショット 2024-07-20 21.25.45
newmoのオフィシャルサイトはこちら

一方6月には大阪メトロが、タクシー業歴70年を超える老舗であり、日本交通グループ関西に属するナショナルタクシーの株式を取得し、ナショナルタクシー放出(はなてん)営業所を分割したうえで新会社にすると発表。会社名はOMタクシーになる予定で、すでに現在ドライバーの募集などを行っています。

2つの会社の目的は異なります。newmoは岸交への資本参加ではライドシェア事業の開始を表明し、未来都の経営権取得ではIT技術を活用したタクシー会社の経営効率化を目指すとしています。オフィシャルサイトでは今後もタクシー会社との提携や営業・開発拠点の開設を進め、2025年度中に全国主要地域での展開、タクシー車両数3000台を目指すとしています。3000台というのは、現在の日本のタクシー会社で第5位に近い数字であり、かなり高い目標であることがわかります。

スクリーンショット 2024-07-20 21.21.06
OMタクシーのオフィシャルサイトはこちら

ライドシェアに対するタクシー業界の反対が根強く、他の業界の参入が難しいという現状で、それでもライドシェアに参入するために、自分たちがタクシー会社になるという方法を選んだのかもしれません。もちろん彼らはタクシーの経験がほとんどありませんが、現場で働く人たちの多くは以前からタクシー業界にいた人たちであり、そこに経営陣が以前在籍していたメルカリでのアプリ経験が融合すれば、素晴らしいサービスになる可能性があります。

これに対して大阪メトロは、グループ内に大阪シティバスを持つほか、オンデマンドバスも運行しており、これらを使ったシームレスな移動を提供すべく、都市型MaaS「e METRO」を推進しています。ここに移動の自由度が高いタクシーが加わることで、移動ニーズに応じた最適な移動手段を提供できると表明しています。欧州の都市型MaaSでは一般的なオールインワンの形に近づいていると好感を抱いています。自分自身、バスにするかタクシーにするか迷うことはあるので、配車を含めて時間と運賃を比較できれば便利になりそうです。

スクリーンショット 2024-07-20 21.33.16

2つの事例から伝わってくるのは、資本参加や株式取得という手法を取らなければ、タクシー業界の改革をしていくのは難しいというメッセージです。東京23区内はともかく、地方は経営体力に余裕がないタクシー会社が多いので、newmoのような組織が関わることでブラッシュアップしていくことは、好ましい結果をもたらすのではないかと思っています。