このブログでも何度か取り上げてきた芳賀・宇都宮LRT(ライトライン)が、今週月曜日に開業1周年を迎えました。ニュースで報じられているように、利用者数は当初の予測を約2割上回っており、しかも今年7月の利用者数が過去最高だったそうです。4月以降は開業直後だった昨年9月の利用者数を超え続けており、乗る人が増え続けていることがわかります。
私が今年乗ったのは6月の週末だけですが、宇都宮駅東口からショッピングモールがある宇都宮大学陽東キャンパス停留場までは座れない人もおり、公共交通として定着していることが確認できました。10年以上前からこのプロジェクトを見てきたひとりとしては、たしかに開業までの紆余曲折はありましたが、拙速に進めなかったからこそ、成功を収めたのではないかと思いました。
宇都宮市が東西の交通軸を考えたのは、今から30年も前のことです。しかしその後、県知事が変わると動きがストップしたりしました。県知事も市長も推進派になり、2013年に芳賀町を交えて本格的な検討委員会が設置され、市役所にはLRTのための部署ができたものの、その後も市長選挙で反対派の候補が僅差まで肉薄したことがありました。
LRTがJR東日本宇都宮駅の東側から整備した理由のひとつに、同市東側から芳賀町にかけて広がる工業団地に向かうマイカーによる交通渋滞がありました。当初はこれを解消することが最大の目的でした。逆方向、つまり朝宇都宮駅に向かう利用者はあまり期待していないという説明でした。それが明るみに出て、多くの市民に関係ない路線に多額の税金が使われると捉える人が多くなったことが、思うように進展しなかった理由のひとつだと思っています。
そこで市では、市民路線であることを強調するプロモーションを始めました。シンボルカラーのイエローを使い、駅のポスター、ホームページなどで、LRT整備の理由から費用まで、丁寧に市民に説明しました。そのうちに工事が始まり、車両が披露され、市民にも形が見えるようになったことで、徐々に理解度が高まっていったと感じています。
つまり予想以上の利用者を記録し、それが今も増加を続けているというのは、工場への通勤者をメインとした、もともと計算できていた数字に、プロモーションなどによって新たに興味を持った市民の移動がプラスされ、後者の数がLRTへの理解とともに少しずつ増えてきているのではないかと解釈しています。
1周年に際しては、沿線人口や商業施設の来店客数の増加などが報告されています。中でも象徴的なのは3年前、宇都宮市で26年ぶりの小学校開校になった、ゆいの杜小学校でしょう。市が発表した今年5月現在の児童数は850人を超え、市内最大の小学校に成長しました。宇都宮市ではライトラインが、少子化対策や子育て政策にもなっているということになります。
とはいえ良いニュースばかりというわけではありません。現金利用者による電車の遅延は最近は目立たなくなりましたが、トランジットセンターで連絡するバスの本数が少ないうえに、電車が遅れると(LRTは道路の信号に従って交差点を通行するので多少の遅れは出ます)接続がうまく行かないという不満が寄せられています。
LRTとバスの連絡については、富山ライトレール(現在は富山地方鉄道)富山港線のフィーダーバスの紹介をしたことがあります。あちらは電車とバスを同じ事業者が運行しているので、本数が多く接続がスムーズということもあるでしょう。トランジットセンターで連絡するバスについては、コミュニティバスのように市が運営すれば、融通が効くかもしれません。
今後について宇都宮市では、JR宇都宮駅から西側に約5キロ延伸する西側ルートを、2030年代前半に開業したいとしています。現地に行ったことがある人ならわかると思いますが、宇都宮市の中心部はこのあたりで、栃木県庁や市役所、オリオン通りと呼ばれるアーケード、東武宇都宮駅などがあります。いずれもJRの駅から歩くにはやや距離があるので、LRTで行けると助かるという人は多いはずです。
それとともに気になるのは、いままでもプロジェクトを揺るがしてきた政治、具体的に言えば選挙ですが、最近はこれまで反対候補を擁立してきた組織も車両基地を見学するなどしているようです。新たに小学校が生まれ、そこが市内最大になるような効果をもたらしたLRTにただ反対するというのは、難しいと考えはじめているのかもしれません。
だからこそ今後は、今あるトランジットセンターなどの不満点を丁寧に解決しつつ、西側延伸をまちづくりとしてどう生かすか、という方向に論争をシフトしていってほしいものです。それが本来の政治であり、まちづくりではないかと思っています。
私が今年乗ったのは6月の週末だけですが、宇都宮駅東口からショッピングモールがある宇都宮大学陽東キャンパス停留場までは座れない人もおり、公共交通として定着していることが確認できました。10年以上前からこのプロジェクトを見てきたひとりとしては、たしかに開業までの紆余曲折はありましたが、拙速に進めなかったからこそ、成功を収めたのではないかと思いました。
宇都宮市が東西の交通軸を考えたのは、今から30年も前のことです。しかしその後、県知事が変わると動きがストップしたりしました。県知事も市長も推進派になり、2013年に芳賀町を交えて本格的な検討委員会が設置され、市役所にはLRTのための部署ができたものの、その後も市長選挙で反対派の候補が僅差まで肉薄したことがありました。
LRTがJR東日本宇都宮駅の東側から整備した理由のひとつに、同市東側から芳賀町にかけて広がる工業団地に向かうマイカーによる交通渋滞がありました。当初はこれを解消することが最大の目的でした。逆方向、つまり朝宇都宮駅に向かう利用者はあまり期待していないという説明でした。それが明るみに出て、多くの市民に関係ない路線に多額の税金が使われると捉える人が多くなったことが、思うように進展しなかった理由のひとつだと思っています。
そこで市では、市民路線であることを強調するプロモーションを始めました。シンボルカラーのイエローを使い、駅のポスター、ホームページなどで、LRT整備の理由から費用まで、丁寧に市民に説明しました。そのうちに工事が始まり、車両が披露され、市民にも形が見えるようになったことで、徐々に理解度が高まっていったと感じています。
つまり予想以上の利用者を記録し、それが今も増加を続けているというのは、工場への通勤者をメインとした、もともと計算できていた数字に、プロモーションなどによって新たに興味を持った市民の移動がプラスされ、後者の数がLRTへの理解とともに少しずつ増えてきているのではないかと解釈しています。
1周年に際しては、沿線人口や商業施設の来店客数の増加などが報告されています。中でも象徴的なのは3年前、宇都宮市で26年ぶりの小学校開校になった、ゆいの杜小学校でしょう。市が発表した今年5月現在の児童数は850人を超え、市内最大の小学校に成長しました。宇都宮市ではライトラインが、少子化対策や子育て政策にもなっているということになります。
とはいえ良いニュースばかりというわけではありません。現金利用者による電車の遅延は最近は目立たなくなりましたが、トランジットセンターで連絡するバスの本数が少ないうえに、電車が遅れると(LRTは道路の信号に従って交差点を通行するので多少の遅れは出ます)接続がうまく行かないという不満が寄せられています。
LRTとバスの連絡については、富山ライトレール(現在は富山地方鉄道)富山港線のフィーダーバスの紹介をしたことがあります。あちらは電車とバスを同じ事業者が運行しているので、本数が多く接続がスムーズということもあるでしょう。トランジットセンターで連絡するバスについては、コミュニティバスのように市が運営すれば、融通が効くかもしれません。
今後について宇都宮市では、JR宇都宮駅から西側に約5キロ延伸する西側ルートを、2030年代前半に開業したいとしています。現地に行ったことがある人ならわかると思いますが、宇都宮市の中心部はこのあたりで、栃木県庁や市役所、オリオン通りと呼ばれるアーケード、東武宇都宮駅などがあります。いずれもJRの駅から歩くにはやや距離があるので、LRTで行けると助かるという人は多いはずです。
それとともに気になるのは、いままでもプロジェクトを揺るがしてきた政治、具体的に言えば選挙ですが、最近はこれまで反対候補を擁立してきた組織も車両基地を見学するなどしているようです。新たに小学校が生まれ、そこが市内最大になるような効果をもたらしたLRTにただ反対するというのは、難しいと考えはじめているのかもしれません。
だからこそ今後は、今あるトランジットセンターなどの不満点を丁寧に解決しつつ、西側延伸をまちづくりとしてどう生かすか、という方向に論争をシフトしていってほしいものです。それが本来の政治であり、まちづくりではないかと思っています。