栃木県を走る芳賀・宇都宮LRT(ライトライン)が、今月26日に開業2周年を迎えます。それを前にした19日には、累計利用者数が1000万人の大台に達したという発表がありました。開業前の想定より半年ほど早い到達とのことです。

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なぜここまでの利用者を集めたのでしょうか。沿線に住む人そのものが増えたことは大きいと思います。先月のブログで、自宅の近くにある東京メトロ方南町駅を取り上げたときに、直通運転開始前と現在の人口比較をしたので、今回も開業前の2015年と今年3月の宇都宮市総人口、市役所のある旭1丁目、以前ブログで取り上げた新設の小学校に近いゆいの杜7丁目で比べると、次のようになりました。

宇都宮市合計  519,904人→513,086人 98.7%
旭1丁目     485人→412 人            84.9%
ゆいの杜7丁目  594 人→1,844人           310.4%

市役所のある地域は、市の平均をやや上回る減り幅なのに対して、ゆいの杜7丁目は爆発的な伸びを示しています。東京のような大都市ではなく、タワーマンションが林立しているわけでもないのにこの増加は驚くべきで、宇都宮市全体の人口が微減というレベルに収まっているのは、ライトライン沿線の人口増加のおかげとも想像できます。それだけLRTには、人を惹きつける力があるということでしょう。

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人口が増えればその分、自動車の数も増え、交通渋滞に悩まされるということになりそうです。しかし栃木県などの調査結果によると、LRT開業後は周辺道路の渋滞は減少傾向とのこと。増加した住民は移動の一部をLRTなどの公共交通で行っていることが窺えます。

さらに以前から住んでいる住民も、移動の一部をLRTに振り替えたと考えられます。ライトラインは開業当初は現金での運賃支払いが多く、遅延が目立っていましたが、現在は交通系ICカードの利用率が向上し、運賃収受による遅れはほとんどなくなりました。これまで公共交通とは無縁だった人たちが、LRTを使おうとカードを持つようになったからでしょう。

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栃木県は、自動車検査登録情報協会の統計によると、自家用乗用車の世帯当たり普及台数が都道府県別で第5位で、その数は1.55台でした(昨年3月末現在)。つまり半分ぐらいの世帯は複数所有ということになります。ただし日本自動車工業会が昨年発表した、2023年の自家用車市場動向調査では、車両価格の上昇を負担に感じ、減車を考えている人が増えているという意見も出ています。

たしかに今年モデルチェンジしたダイハツ工業の軽乗用車「ムーヴ」の価格は135.85~202.4万円と、30年前に登場した初代の約1.7倍です。日本人の平均年収が30年間ほとんど横ばいであることを考えると、負担は大きくなっているはずです。それでも代わりの交通手段がなければ、我慢して所有するしかないですが、この地域にはライトラインがあります。

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公共交通と自動車を対立軸に置く人は今も多いですが、自動車で賄っていた移動をすべて公共交通に置き換えるのは、かなり難しいことです。しかし2台ある自動車を1台に減らして、公共交通と併用するなら、車両価格の上昇も追い風になるし、ハードルはかなり低いはずです。自家用車の普及率が高い栃木県で、ライトラインが予想以上の利用者を記録している理由は、そんな考え方をする人が増えているということなのでしょう。

でもこうした動きは、日本に先駆けてLRTが導入された欧米では珍しくないことです。日本はこれまで新設のLRTがなかったので、効果を懐疑的に見る人も多かったようですが、ライトラインの成功で、LRTにはまちの賑わいを取り戻す力があり、自家用車との共存が可能であることが、理解されつつあります。そのきっかけをこの国にもたらしたことが、ライトラインの大きな価値だと思っています。