ジャパンモビリティショー2025が始まりました。私は今週水曜日のプレスデー初日に行きました。すでに多くのメディアで紹介されていますが、内容は自動車中心で、メディアはまだモーターショーから脱却しきれていない印象です。ここではモビリティジャーナリスト目線で、気になった展示を取り上げていきます。

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まずはスズキ「SUZU-RIDE(スズライド)2」です。2年前のモビリティショーで、このブログでも紹介した「SUZU-RIDE」「SUZU-CARGO(スズカーゴ)」として参考出品されていたものの進化版です。前作では収納ボックスの上にシートがありましたが、今回は荷物を出し入れしやすいよう、別々になりました。このシリーズは特定小型原付を想定して開発しており、説明ボードにもそう書かれていました。

モビリティショーには参加していませんでしたが、電動アシスト自転車でトップシェアのパナソニックサイクルテックが先月発売した「MU」も特定小型原付です。電動アシスト自転車づくりの経験を活かした成り立ちで、発表会では路線バスの減便や廃止が続く中、日常の移動手段に不安を抱く人が多くなっていることを開発の理由に挙げていました。

これらを見れば、特定小型原付が電動キックボードのためのカテゴリーではないことは理解してもらえるでしょう。しかしながら、特定小型原付は交通ルールについては自転車と同じであり、先月青切符導入のブログでも書いたように、日本は自転車の走行空間が絶対的に不足していることも事実です。

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特定小型原付の車両は、自転車と同じ場所を走ることになります。だからこそ、スズキやパナソニックのような大手メーカーに、道づくりを後押しするようなアクションを望みたいものです。 スズキの開発スタッフへの取材では、たしかにインフラが後回しになっているので、その点も考えていきたいと話していました。

鉄道には駅があり、飛行機には空港があります。モビリティ(移動可能性)は乗り物それ自体で完結するわけではなく、インフラやサービスとセットで利便性や快適性を考えていくのが一般的です。自動車も道路や駐車場などのインフラがなければ機能しません。ジャパンモビリティショーなのですから、そのあたりのアプローチも望みたいと思っています。

もうひとつ、ダイハツ工業が参考出品した「ミゼットX」にも興味を持ちました。かつて3輪軽トラックのミゼットが、高度経済成長期に庶民の足として活躍したことは、映画などでも取り上げられていますが、そのミゼットの名前を引き継いだことから、その現代版と言えるでしょう。

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当時と違うのは4輪であること、電動であること、子供用のシートを2つ揃えた3人乗りであることなどですが、個人的にはどのカテゴリーに属するかも気になりました。そこで開発スタッフに話を聞くと、会話の中で「シトロエン・アミ」という車種が出てきました。つまりこのブログで紹介してきた、欧州の超小型モビリティのカテゴリー(L6e/L7e)を想定しているそうです。

もちろん軽自動車の枠内には収まりそうですが、衝突安全試験にパスするのは難しいとのこと。それ以前に、このクルマで高速道路を120km/hで走りたくはないし、そういう姿を見たくないと思う人が多いでしょう。

しかしその下の超小型モビリティは、これもブログで書きましたが、日本ではボディサイズの規定が厳しいうえに、地域限定の認定制度か、軽自動車より緩いものの衝突実験が課せられる型式指定制度のどちらかを選ぶことになり、今回のショーでの展示車両でナンバーを取得しているのは、前者の制度を使ったAIM「EVM」ぐらいに限られています。

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ミゼットXの開発スタッフは、現行の日本の超小型モビリティの制度よりも、欧州のそれのほうがふさわしいと考えたので、このような説明が出てきたのでしょう。私も同感だったので、大手自動車会社の中にこのような思想の持ち主がいたことに対して、嬉しい気持ちになりました。

もちろんルールを作るのは国土交通省になりますが、同省よりも、自動車や自転車を作って売っている会社のほうが、ずっと利用者に近い場所にいます。だからこそこういう立場の人たちが、開発した車両が役目を果たせるようなインフラやルールの構築に向けて、アプローチをしていってほしいものです。そんなきっかけを感じられたことが、今回のジャパンモビリティショーの収穫のひとつでした。