THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

カテゴリ: テクノロジー

最近もニュースで取り上げられることが多い、高齢ドライバーの交通事故。たしかに警察庁の統計では、交通事故死者に占める65歳以上の高齢者の割合が50%を超えたのは2010年と、それほど昔のことではないのに、今年上半期は56.8%に達しています。さらに75歳以上のドライバーが関係する死亡事故は増加しているうえに、それ未満の年齢層と比べると、車両単独事故の比率が高いという傾向も出ています。

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これらの数字を見ても、交通事故による犠牲者を減らすために、高齢ドライバー対策が重要であることは明らかですが、海外はどうなのでしょうか。先月、安全性の高さで定評のあるスウェーデンのボルボカーズで、約30年にわたり安全分野の研究開発を行ってきたエキスパートが、東京でメディア向けセミナーを開催したので出席してきました。 内容についてはマイナビニュースで記事にしたので、ここでは個人的に感じたことを記していきたいと思います。

まず感じたのは、自動車メーカーがここまで高齢ドライバーの研究や実験を行っていることへの驚きと、その結果を数字などを多用してはっきりと、わかりやすく伝えていたことでした。最初のほうで紹介していた、高齢者は骨折しやすく回復に時間がかかるという言葉は、日常生活でも聞く話なので納得できたし、左右方向の首の可動域が狭くなっていて、動く物体より止まっている物体を注視する傾向があるという調査結果からは、運転という行為を多角的に研究していることが伝わってきました。

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運転免許の返納については、スウェーデンでは自動車は個人の移動手段として重要という認識で、運転を止めることで生活面で大きな問題が生じることを懸念する声が、インタビューで多数出たとのことでした。つまり運転免許返納は、年齢ではなく身体や認知などの状況で判断するべきとのことでした。これについては同感ですが、同時に自分の運転能力をどう評価するかという部分も興味を持ちました。

自分の運転を過小評価する人は、一見すると安全だと感じるかもしれませんが、移動を自ら制限してしまい、健康的な生活を送るうえで好ましくないと指摘していました。逆に過大評価する人は、ミスをしたときに言い訳をしたり、先進運転支援技術(ADAS)を受け入れにくいという傾向もあり、懸念材料が多そうです。こうした部分は先天的でもあるので、年齢や体力、認知以上に難しいテーマだと考えさせられました。

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 もちろんこうした研究結果は車両開発に生かされていますが、一方で高齢ドライバーの安全運転のために挙げた10のポイントの多くが運転者に関することで、自動車メーカーの人間でありながら、車両側の項目はわずか2つに留まっていました。そしてスウェーデンでは1990年代から、インフラで事故を防ぐ対策を進めていることにも言及していました。交通安全は人と車と道路のすべてが協力して作り上げていくものというメッセージと受け取りました。

そういえば隣国フィンランドの首都ヘルシンキは今年8月、1年間交通事故死者ゼロを達成しました。多くの道路を30km/h制限とし、歩行者や自転車のための空間を拡充するなど、主としてインフラ整備がこの結果につながったそうです。また火曜日に放映されたNHK総合テレビ「クローズアップ現代」は、10のポイントのひとつ「交通量の少ない時間帯や昼間に走る」について、海外では限定免許として実施されている場所もあるという解説がありました。世界にはまだまだ交通安全のヒントがありそうです。

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個人的に10のポイントの中でもっとも印象に残ったのは、「運転の練習を続ける」という言葉です。我が国では最近の調査でも、運転に対する自信は高齢になるほど高くなる傾向という結果が出ています。たしかに経験は豊富になっていますが、自分を含めて可動域や判断速度は衰えつつあるわけです。それをカバーするためにも練習が必要という言葉は、とても説得力がありました。

今週末は私も所属している、日本福祉のまちづくり学会の全国大会参加のため、久しぶりに石川県小松市を訪れています。本日自分の研究発表と、研究討論会への出席を済ませたところです。発表および討論会を聞いていただいたみなさまには、この場を借りてお礼を申し上げます。

今回のテーマは、自分の活動範囲を生かして、ライバルにも挙がりがちな自家用車と公共交通の対比としました。公共交通の側から見ると、マイカーは無敵と思われがちですが、実際は車両価格や燃料代の高騰など、厳しい面もあることを取り上げました。加えて、運転中のスマートフォン注視や操作が道路交通法で禁止されていることにも触れました。

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公共交通を利用しているときは、言うまでもなく通話は控えるべきですが、私を含めて現在、スマートフォンの主な用途が通話という人は少数派で、動画やゲーム、SNSをはじめとするアプリの利用がメインになるでしょう。これらは音漏れに気をつければ、自由に使えます。これは公共交通の大きなアドバンテージではないかと考え、発表に盛り込みました。

ただそのためには、より快適に利用できる環境を用意することも大切です。一例を挙げれば、車内や駅構内などでのWi-Fi提供です。ブログで何度か紹介している、栃木県の芳賀・宇都宮LRT (ライトライン)では、すべての車両および宇都宮市内の停留場に、フリーWi-Fiサービスがあります。先日、平日昼間に乗車すると、かなりの人がスマートフォンを見ており、私もストレスなく使えました。これもまた公共交通の魅力のひとつだと再認識しました。

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一方の自家用車には最近、ディスプレイオーディオなるものが装備された車種があります。スマートフォンを有線あるいはBluetoothで車両と接続すると、インパネ中央のディスプレイで地図を表示したり、音楽を流したりできるもので、私が所有する車両にもついています。

ただし安全性を考えてでしょう、YouTubeなどの動画は見ることができません。カーナビ画面で走行中にテレビを見ることと同じで、違反になるからでしょう。ところがインターネットを見ると、ディスプレイオーディオでYouTubeを見ることができるような改造を紹介しているサイトがあります。驚いたのはその中に、自動車メーカー系列のディーラーもあったことです。

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前回のブログで、埼玉県小鹿野町で開催されたフォーラムに出席したことを書きましたが、乗用車よりも目線の高いモーターサイクルで高速道路や国道などを移動していてわかったのは、スマートフォンを見ながら運転している人がかなりいたことです。とりわけ目についたのはトラックでした。パトカーからは運転席が見えないのをいいことに、違法行為に及んでいるのでしょうか。

警察庁の統計では、今年上半期の携帯電話等使用による死亡・重傷事故件数は、違反の厳罰化が行われた翌年以降増え続けており、過去最高になっています。飲酒運転やあおり運転のように、やがて重大な死亡事故が起こり、それを契機にさらに厳しい処分になるという暗い将来が想像できます。

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そうならないためにも、商用車はともかく乗用車に乗る人は、スマートフォンを見ながら移動したければ公共交通を使うという習慣をつけてほしいものものだと、先週末のライダー経験を踏まえて思ったし、公共交通の事業者はこの点をもっとアピールしても良いのではないかと感じたのでした。

東京都内でウェイモの自動運転実証実験車両を見かけることが増えてきました。グーグルの自動運転研究開発部門が独立する形で生まれたウェイモは、東京都内の大手タクシー会社、日本交通と提携したのに続き、トヨタ自動車とも協業を合意したので、今後は我が国でもタクシーなどの自動運転の展開に関わることが予想されます。それを考えれば実証実験は納得できる動きです。

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ところで最近、E2E(エンドツーエンド)という新しい自動運転の考え方が注目されています。私も最近知ったので、しっかり理解しているわけではありませんが、その範囲内で説明したいと思います。

従来の自動運転は「ルールベース」と呼ばれ、交通ルールをひとつひとつAIに読み込ませ、LiDAR(ライダー)などの高性能センサーや高精度地図(ダイナミックマップ)を使って実際の交通環境を読み取り、そこをルールに沿って走行するもので、ウェイモのほか日本の自動車メーカー、中国のバイドゥが立ち上げたアポロなどが採用してきました。

これに対してE2Eは、情報を取得するのはカメラだけで、その後はさまざまな交通環境を学習したAIがすべてを判断することから、この呼び名が付けられたようです。なのでLiDARや高精度地図は不要とのことです。生成AIが学校での勉強をしてこなかったのに、インターネットの情報を取り込んで文章を作成する状況に通じるところがあります。

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こちらは米国テスラが、母国で自動運転レベル2ではあるもののハンズオフ(手放し運転)を実現する高度運転支援機能「FSD(フル・セルフ・ドライビング)」でE2E方式を導入し、テキサス州オースティンで運用が始まった「ロボタクシー」に採用。日本では導入を前にテスト走行が始まっています。中国のファーウェイもこの方式を使っており、我が国では自動運転スタートアップのチューリングがこの方式に取り組んでいます。

E2E方式は、ルールベースでは戸惑ってしまう、路上駐車や道路工事などにも柔軟に対応できるほか、高精度地図が必要ないので、道を選ばずどこでも行けるという利点もあるそうです。なので限定領域で完全自動運転を実現するレベル4の上、限定領域なしのレベル5にはこちらのほうが適していると言われています。しかもLiDARや高精度地図を使わないため、コスト面でも有利です。だからでしょう、経済メディアでも取り上げることが多くなっています。

生成AIを使っていると、たしかに戸惑うことなくさまざまな質問に答えてくれますが、ところどころ適当に見繕って回答を出す、「ずる賢さ」を感じることがあります。なので法律分野などは、現状では信頼できるレベルにないと認識しています。E2Eに携わる関係者の中には、将棋や囲碁でAIが人間に勝ちはじめたので運転もAIでいけるのではないかという考えを持っているようですが、事故が起こると最悪の場合、他人や自分の命を落とす可能性があることは、わきまえておいてもらいたいと思います。

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経済産業省「『モビリティDX戦略』2025年のアップデート」はこちら

とはいえAIの進化のスピードは驚くべきレベルであり、当初は使い物にならなかった音声入力や翻訳は、今や信頼できるレベルに達しています。なのでE2Eの自動運転がルールベースと同等の信頼性を手に入れ、駐車車両や工事箇所をスムーズに回避していくようになれば、自動運転の主流になるかもしれません。 となるとやはり、受け手の気持ちが大事になりそうです。日本も自動運転の技術レベルは高いと信じているので、それを育てるようなマインドが求められていると感じています。

今週は私も所属している日本自動車ジャーナリスト協会で、神奈川県にあるいすゞ自動車藤沢工場での勉強会がありました。最新の小型トラック「エルフ/エルフEV」に試乗するとともに、トラックのコネクテッド、自動運転、電動化についての説明があり、一時期自動車業界を賑わせたCASE(コネクテッド、オートノマス、シェア&サービス、エレクトリック)というフレーズを思い出しました。

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いすゞ自動車のオフィシャルサイトはこちら

乗用車は個人の嗜好で選ばれるので、CASEについても最終的には個々のドライバーに任されます。しかし日本でもさまざまな気候変動を引き起こしている地球温暖化などの社会課題に、自動車が対応することは不可欠で、商用車が率先してこの問題に取り組んでいかなければなりません。加えてドライバー不足への対策も重要です。当日はこうした背景を含めての説明がなされたので、自分を含めて普段トラックに触れていない人も理解できる内容でした。

その中で印象に残ったのは、3分野ともに独自開発をしていることです。自動運転については、このブログで以前紹介した高速道路でのレベル4を話題に挙げていましたが、国が主導する「RoAD to the L4」で規格が共通なのはインフラ部分だけで、車両側は各社が独自に開発しているそうです。電動化についても同様で、コネクテッドも他のトラックメーカーとの関連はないとのことでした。

【P15】いすゞ|0722商用車説明会プレゼン資料

今週は東京秋葉原のUDXアキバ・スクエアで開催された「まちづくりデザインWEEK」にも足を運びましたが、そこには日野自動車のグループ企業、日野コンピューターシステムが出展していました。いすゞが紹介したのは顧客向けの物流最適化だったのに対し、日野は官公庁や自治体向けの脱炭素ソリューションをアピールしていました。いすゞによると、自動運転もコネクテッドも試行錯誤の段階で、ある程度のレベルに到達したところで統一化という流れになるのではないかとのことでした。

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日野コンピュータサービスのオフィシャルサイトはこちら

ただ両社も関わるバスでは10年ぐらい前から、米国Googleとオレゴン州ポートランドの交通事業者TriMetが共同開発したGTFSを母体とする「GTFS-JP(標準的なバス情報フォーマット)」が導入され、全国の多くのバスの停留所、時刻表、運賃といった静的情報に加えて、渋滞による遅れなどの動的情報が、GoogleマップやYahoo!乗換案内などのアプリに反映されるようになっています。トラックもコネクテッド領域では、フォーマットの統一化が望ましいのではないかと思いました。

まちづくりデザインWEEKではヤマトグループの企業、ヤマトオートワークスの展示も目を惹きました。グループで使う10万台近い車両の整備や管理を行うという経験を生かし、社用電気自動車(EV)の導入計画立案、充電器の設置場所検討、車両および充電器のメインテナンス代行、導入効果の検証および報告などを、ワンストップでサポートする「EVライフサイクルサービス」を紹介していました。

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ヤマトオートワークスのオフィシャルサイトはこちら

日本はいわゆる「EV嫌い」が根強いうえに、乗用車の感覚で商用車を考える人も多く、それが社会的に重要な商用車のCASEにまで影響を及ぼしていると感じています。そのための対策として大事なのは、敷居を下げること。メーカーでは日野に続いていすゞでも、普通自動車免許で運転できるトラックを登場させていますが、同時にヤマトのような導入サポートもありがたいと感じました。

先月に続いて佐賀県に行ったときのことを書きます。今回のテーマはMaaSです。最近この言葉を目にしなくなったと感じている人もいるでしょう。私も同じ感想を抱いていますが、一方で我が国では地方を中心にMaaSの導入や進化が続いていることも事実です。そこで2022年にサービスを開始した「さがMaaS」を試してみました。

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さがMaaSを使った様子、最近のMaaSの状況などは、自動車専門ウェブメディア「AUTOCAR JAPAN」で書いたので、気になる方はそちらも読んでいただければと思いますが、10年ほど前にMaaSが誕生してから現在まで、新型コロナウイルスの感染拡大、世界初のMaaS「Whim」を送り出したMaaS Globalの破産申請など、逆風と言えるニュースもいくつかありました。そして最近では、生成AIの登場もMaaSに関係していると思っています。

今回は九州佐賀国際空港から仕事先に近い佐賀駅まで、複数の施設に立ち寄りながら移動しましたが、ルートをChatGPTに尋ねたところ、下のような答えをしてきました。

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ちなみに、さがMaaSでは経由地は1ヶ所しか設定できず、Googleマップは公共交通を使う場合は経由地の設定はできないようです。しかも双方ともに、出発地や経由地、到着地を個別に入力していく必要があります。それに比べるとChatGPTは、一度の音声入力で3つの経由地を含めた経路を瞬時に出してきました。文章も整理されていて読みやすいと感じました。

しかしながら間違いもけっこうあります。柳町というバス停はなく、町名はありますが、そこにあるのは佐賀市歴史民俗館でした。県立博物館の最寄りのバス停はその名も「博物館前」です。さらに県庁から見て大隈重信記念館は南ではなく東にあり、大隈重信記念館から佐賀駅までは徒歩ではなく、バスで約15分でした。その後空港から博物館までだけのルートを尋ねると、先ほどとは違って佐賀駅までバスで行き、そこからタクシーを使うという答えを出してきました。



でもその土地に行ったときしか使うことがない地方型MaaSに対して、ChatGPTやGoogleマップはさまざまなシーンで役立つので、どうしてもそちらに頼りがちです。理想を言えば、生成AIの精度を上げたうえでMaaSアプリに組み込むことになりますが、個人的にはそこまで完璧にしてほしいとは思わず、むしろ経路検索とチケット決済を上手に使い分ける形が良いのではないかという気がしました。

とはいえ現状のMaaSに満足しているわけでもありません。さがMaaSで佐賀空港から博物館を経由して佐賀駅に至る経路を検索すると、お得なチケットの案内が出てきますが、なぜか1日乗車券はなく、より高価でルートも限定される「佐賀空港2WAYチケット」のみが提示されていました。さらに日本国内の多くのMaaSに共通することですが、多くは単独の交通事業者のチケットで、JR九州と佐賀市営バスを組み合わせて使えるようなものはありません。

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このあたりは欧米のように、ひとつの都市圏はひとつの交通公団などが管理する体制にすれば解決するので、交通事業者の数が少ない地方から、こうした体制への移行を望みます。でも現状のMaaSそのものを否定しているわけではありません。利用者側のメリットだけでなく、事業者側のメリットもあるからで、デジタル化によって手に入る移動データの収集と解析を進めていけば、地域移動の最適化に役立てることができます。

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ところで佐賀市では、地域住民向けのポータルアプリ「佐賀市公式スーパーアプリ」も2023年に立ち上げています。デザインに力を入れている地域らしく、インターフェースはスマートで使いやすく、さまざまな市民サービスを窓口に行かずに受けられるほか、バスのチケットなどもここから買うことができます。アプリを活用する市民が増えれば、業務の効率化によるサービス向上も期待できます。こうした取り組みも大切だと感じました。

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