THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

カテゴリ: まちづくり

全国的に百貨店の閉店のニュースが多くなっています。その中でも大きく取り上げられたのが今年2月、地元の人たちは「名駅」と呼ぶ名古屋駅前の名鉄百貨店本店で、隣にある近鉄百貨店名古屋店「近鉄パッセ」ともども閉店となりました。たまに名古屋を訪れるたびに、駅前風景のひとつとして目にしていたので、今年の春に閉店後の姿を見て、ちょっとショックを受けました。

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今週、その名鉄百貨店が入っていた名鉄ビルに、ヨドバシカメラが出店するという発表がありました。今年の夏にオープンとのことで、名古屋では繁華街の栄地区に続く2軒目ということになるそうです。ヨドバシカメラと言えば先月末、東京池袋の西武百貨店池袋本店にも新店舗ができたことを知っている人もいるでしょう。

日本のターミナルの周辺に家電量販店がある風景は、すっかりおなじみになりました。 こうした変化をネガに捉える人もいそうですが、もともとヨドバシカメラはヤマダデンキのようなロードサイド戦略ではなく、阪急百貨店や東急百貨店などが先駆者となったレールサイド戦略を、いち早く進めてきたという歴史があります。百貨店から家電量販店へ、業態が入れ替わったという見方もできるのではないでしょうか。

自分自身も、家電製品やカメラは買い物の中では高価なので、実際に手に取って選びたいし、専門知識があり、アフターサービスも信頼できるので、事務所から近い新宿駅西口のヨドバシカメラ本店はよく行きます。百貨店の閉店が続く中、家電量販店の新規出店が続いているのは、そのように考える人が多いからではないかと思っています。

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ところで当日は名駅から、以前少し紹介した新たな路面交通システム「SRT(Smart Roadway Transit)」に乗って栄に行きました。SRTは都心部の回遊性向上や賑わいの拡大を図るために導入されたもので、LRTやBRTのような高速(Rapid)は求めず、名古屋市営地下鉄東山線で約5分で移動できる名古屋~栄間を約15分かけて走っています。今後は名駅と名古屋城を結ぶ系統なども考えられているようです。

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SRT名古屋のオフィシャルサイトはこちら

運行は名鉄バスが担当。車両はメルセデス・ベンツ製で、アーバンゴールドとブラックの2トーンは他の路線バスとの違いが際立ちます。車内は木を多用し、間接照明も取り入れていて、レイアウトを含めて斬新でした。私が名古屋市内を移動するときはもっぱら地下鉄なので、地上の景色を眺めながらゆっくり移動するのは新鮮だったし、地上を走る乗り物ならではのわかりやすさも感じました。

栄は高層ビルが林立し、多くのオフィスがある名駅周辺とは対照的に、テレビ塔がある幅100mの久屋大通の中央が「ヒサヤオオドオリパーク」になっていました。開業は2020年で、園内に飲食店や商業施設を設け、その収益を公園の管理や整備の一部に充当するPark-PFI方式を導入しており、公園ならではの開放感はそのままに、低層の商業施設を組み込んだ作りに好感を持ちました。週末だったこともあり、名駅に比べて若者が多く、2つの繁華街が棲み分けできている感じもしました。

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雰囲気的には昨年訪れた大阪梅田駅北側の「うめきた広場」に通じる場でした。モノの豊かさを追い求め続ける東京で暮らすひとりとして、コトの豊かさにも気を配った名古屋や大阪がうらやましいと感じました。

今週末、東京西新宿で「スマートシティフェスタ 2026」というイベントが行われています。東京都の主催で、最新のデジタル技術を活用したさまざまな先端サービスを体験する機会を提供し、便利になった未来のまちを感じてもらうというもので、今年で5回目になるそうです。私は昨日見てきたので、モビリティとロボットに関連した展示を取り上げます。

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モビリティで多かったのは、ひとり乗りで歩道を通行するパーソナルモビリティでした。以前紹介したことがあるホンダ(本田技研工業)のモビリティロボット「UNI-ONE」のほか、体幹の動きをベルトで感知し前後左右に移動するハンズフリー車いす「Feeling(写真上)」、配送ロボットの技術を応用した自律走行型ロボット「LOMBY(下)」がありました。

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UNI-ONEは以前乗ったことがあるので、今回はそれ以外の2台を試しましたが、Feelingの説明で興味深かったのは、社会貢献を考えていること。具体的には脳梗塞からのリハビリに役立つとのことで、そういう用途もあるのかと教えられました。UNI-ONEも下肢が不自由な人たちに業務で活用してもらう実証を重ねてきており、LOMBYは認知機能が低下してきた高齢者の移動をサポートできそうです。

ロボットでは人の動きを再現したヒューマノイド型ロボット「Unitree G1」のほか、米国Boston Dynamicsが開発した四足歩行ロボット「Spot」も姿を見せていました。以前から実物を見てみたいと思っていたSpotは、長い首を持つタイプはドアの開け閉めなどが可能。顔の部分をカメラにしたタイプは警備や捜索ができるとのことで、日本のような災害が多く発生する地では、災害用ロボットとして重宝しそうです。

一連の展示を見て感じたのは、現代社会は自動車や自転車などの既存の乗り物では対処できない分野が増えており、新たなモビリティやロボットが求められているということです。見た目の面白さからアミューズメント的に捉える人がいるかもしれませんが、実際は私たちの生活の役に立つものばかりであると理解しました。

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スマートシティフェスタ2026のウェブサイトはこちら

会場のロケーションにも感心しました。新宿駅西口地下広場と都庁や新宿中央公園、これらを結ぶ4号街路と呼ばれる道路の歩道を使っているので、駅と公園の間を往復しながら見ていくことができました。歩道を広く確保しているからこそ、このような催しに対応できるのだと実感しました。スマートシティというとデジタルを結びつけがちですが、こういうスマートさも大事ではないかと思いました。

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もちろんまちづくり関連の展示もありましたが、スケールが大きくて、自分たちにとって何がメリットなのか、わかりにくいという人もいるでしょう。その点、スマートシティを構成するピースであるモビリティやロボットは、私たちの生活をサポートしてくれることがリアルに実感できます。こういう視点でスマートシティを見ていけば、イメージが少し変わるかもしれません。

1月下旬、東京都内で国産eVTOL(イーブイトール:電動垂直離着陸機)、スカイドライブのテストフライトがありました。eVTOLについてはこれまで、展示を見たことはありますが、飛行中の様子を目にしたことはありませんでした。YouTubeなどで動画がアップされているので、それを見れば飛んでいる様子がだいたい把握できたということもあります。

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しかし少し前にこのジャンルのセミナー講師を務めたことから、実際に飛ぶ様子を見たほうが良いという気持ちになり、会場の東京ビッグサイト駐車場に足を運びました。 そのときの様子は「AUTOCAR JAPAN」の連載で記事にしているので、興味がある方は見ていただければと思います。ここではeVTOLの現状や個人的な要望などについて、綴っていきたいと思います。

eVTOLのここまでの道のりは、順風満帆とは言えません。ドローンによる世界初の有人飛行は、 2011年にドイツのボロコプター(Volocopter)が達成。2017年には改良型がドバイで世界初のテストフライトに成功しましたが、昨年破産し中国企業に吸収されました。米国ウーバー・テクノロジーズが当初、自分たちのモビリティサービスにeVTOLを組み込もうとしていることはこのブログでも紹介しましたが、コロナ禍でプロジェクトは中止されました。

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大阪・関西万博では目玉としてeVTOLを位置付けたものの、前年9月に4つの事業者すべてが耐空証明や型式証明が取得できないことを理由に、商用運航を断念すると発表。デモフライトに切り替えたことはご存知のとおりです。そして1月のテストフライトも、5日間の朝と昼の2回、合計10回が予定された中で、実際に飛んだのは4回で、それ以外は雨や風、整備を理由にキャンセルされていました。



2023年にスカイドライブが個人向け予約販売を開始したときに、価格が150万ドル(約2億円)と報じられたことは以前書きました。このときは2人乗りでしたが、直後に操縦士+乗客2人の3人乗りとした進化型が登場。運航会社やエンドユーザーの要望を受けたそうですが、エアタクシーとも呼ばれる海外での位置付けに近づいており、好ましいことだと感じていました。

では気になる運賃はいくらぐらいでしょうか。少し前までは、陸上のタクシーと同程度という内容が多かったと記憶していますが、1月のテストフライトではタクシーの2倍以下が目標と報じられていました。庶民が日常的に利用するのは難しいでしょう。でも個人的にはそれぐらいで良いというか、所要時間の差を考えればもっと高価であっても妥当だと考えます。

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機体のサイズはスカイドライブの場合、縦横ともに13mとかなり大きいうえに、日本のルールでは地上や海上、あるいは他の機体から150m以上の距離を保つことになっているからです。都市部のクルマの台数をそのまま空中で飛ばすのは不可能と考えて良いでしょう。日本でひんぱんに使われてきた「空飛ぶクルマ」ではなく、グローバルで通用するeVTOL (イーブイトール)という言葉を使っているのは、そこに理由があります。調べれば調べるほど、これをクルマと呼ぶのは無理があります。

しかし私はこの乗り物を全面的に否定しているわけではありません。国土が広く人口密度が少ない米国のような場所とは違う、我が国ならではの事情に合っているからです。日本は国土の75%が山地で、島の数は世界第7位。海岸線の長さは第6位です。陸上移動が困難な地域が、世界トップレベルで多いと言えます。しかもそこに、1億2000万人という多くの人が暮らしています。

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人ではなく物を運ぶドローンは、大都市ではなく、山間部の過疎地から実証実験やサービスが始まっています。こうした地域は多くが人口減少や高齢化に加え、自然災害により、日々の移動すら苦労する状況に追い込まれています。スカイドライブもJR東日本やJR九州と連携して、岩手県や大分県での移動提供を計画していますが、今後も社会目線での導入を望みたいし、国もこういう分野での展開は後押ししてほしいと考えています。

受験シーズンだからというわけではないですが、今回は通学と交通の関係を綴っていきます。舞台は昨年秋に続いて訪れた長野県上田市です。

今回は現地の公共交通を利用したのですが、平日の日中ということもあり、昨年10月に大規模なダイヤ改正を行ったバスは、期待したほどの乗客はいませんでした。だからこそ、昼過ぎに乗った上田電鉄別所線、夕方近くに利用したしなの鉄道しなの鉄道線がともに、座席がほぼ埋まり、立ち客もいるほどなのに驚きました。 

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乗客の姿を見て理由がわかりました。別所線は大学、しなの鉄道線は高校に通学する人が多かったのです。とりわけ印象的だったのは別所線で、途中の大学前駅で、上田駅を発車した電車に乗っていた乗客の半分ぐらいが降りました。帰りはその逆で、この駅で乗客が倍に増えました。

ここには駅から徒歩10分圏内に公立長野大学と私立上田短期大学があり、さらに駅からやや離れていますが、長野県工科短期大学校もあります。おかげで駅別乗降客数では、北陸新幹線も乗り入れる上田駅、街道沿いで住宅が多い上田原駅に続く3番目となっており、観光客が多い終点の別所温泉駅を上回っているのです。

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駅ができたのは1921年で、その時は下本郷という駅名でしたが、戦後になって駅の近くに大学が開設されたことから、今の駅名になったそうです。大学にとっては、遠距離通学を受け入れやすくなるというメリットがありそうだし、別所線にとっても、沿線には学生向けのアパートも点在しているうえに、大学は授業の時間帯がばらばらなので乗客の分散化が図れます。いろいろな意味でありがたい存在だと感じました。

一方のしなの鉄道は、上田駅より西側の駅の近くに高校がいくつかあります。上田駅の隣、西上田駅の南徒歩5分の場所にある私立上田西高校もそのひとつです。 西上田駅は信越本線北塩尻駅として1920年に開業。塩尻というのはこの地域の地名ですが、すでに中央本線に塩尻駅があったので「北」がついたそうです。そして戦後1956年に今の駅名になりました。

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上田西高校ができたのは1987年。上田電鉄上田原駅周辺にあった上田城南高校が、校名を変えて西上田駅の近くに移転してきました。 西上田駅のまわりは住宅があまりなく、同じ上田市内にあるしなの鉄道の大屋駅や信濃国分寺駅の周辺と比べて閑散としていますが、乗降客数はこの2駅より上で、上田駅に続く2番目です。ここもまた通学輸送に支えられていると感じます。

今回はこの西上田駅から上田駅までひと区間だけ利用しました。西上田駅で乗る人は少なかったものの、上田駅の近くには上田高校があり、反対側にはその名も屋代高校前という駅もあるぐらいなので、両方向とも高校生風の乗客が多く乗っていました。こちらも通学が鉄道を支えていると実感しました。

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上田市公共交通活性化協議会では昨年10月のバス再編前に、アンケートを実施しています。その中で目を惹いたのは、市内高校に通学する生徒を対象とした交通手段で、しなの鉄道がバスを大きく上回っていて、家族送迎や自転車に匹敵していたことです。複数回答可能な質問だったので、駅まで送迎や自転車で来て、そこから鉄道を使うというパターンでしょうか。

学生や生徒の数が少なければ、バスに置き換えるという話も出てきそうですが、長野大学の学生数は約1500人、上田西高校の生徒数は約800人です。大学はクルマやバイクで通学する人もいそうですが、運転手不足も考えれば、バスでは到底さばき切れないでしょう。

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上田市公共交通活性化協議会のウェブサイトはこちら

時間に正確で大量輸送が可能な鉄道は、通学に適した移動ツールだと認識したし、家庭や学校だけでなく、少子化が課題になっている自治体でも、まちづくりという観点で高校や大学が駅近であることは大事だと感じました。

12月11日は、ユネスコの世界遺産に日本の歴史的建造物や自然環境が初めて登録された日です。今から32年前のこの日、青森県と岩手県にまたがる白神山地および鹿児島県の屋久島が世界自然遺産、奈良県の法隆寺と兵庫県の姫路城が世界文化遺産として登録されました。今年の秋はその4件のうち、唯一行っていなかった姫路城に、少し前のブログで取り上げた広島からの帰りに立ち寄りました。

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ただここでは姫路城そのものではなく、駅前広場とそこから城に向かう大手前通りにスポットを当てます。駅前広場は今年、再開発が完成して10周年を迎え、4年後には大手前通りの改修が完了していますが、2015年にはグッドデザイン賞で特別賞を受賞し、2022年には以前このブログでも紹介した国土交通省の「ほこみち」の第1号として指定されるなど、以前から高い評価を受けている場所です。

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新幹線を降りて北口を出ると、目の前に広場があり、その向こうに大手前通りが姫路城に伸びていく様子を、クリアに見ることができます。普通の駅前にあるバスやタクシー乗り場が、広場の西側にあるからです。大手前通りが右にカーブしているのはそのためですが、おかげで城の眺めを遮られることがないし、まちの軸をはっきり感じます。

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さらなる眺望を望むなら、2階の眺望デッキ(キャッスルビュー)がお勧めです。城門をイメージしたという吹き抜けの箱になっていて、額縁に収められた絵画を見ているような眺めでした。このデッキから伸びる歩道橋も優しいカーブを描いていて、人工物の冷たさを感じさせないようにという作り手の気持ちが伝わってきます。

一方駅前広場の東側には、キャッスルガーデンと芝生広場があります。地上にある芝生広場に対し、キャッスルガーデンはサンクンガーデンと呼ばれる一段低い位置にあるスペースで、城のまちらしい石造りとしているうえに、そのまま駅の地下街にアクセスできる使いやすさにも感心しました。

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駅前広場から伸びる大手前通りは、歩道や自転車レーンが広く取られているだけでなく、ベンチが各所に置かれ、一部の飲食店はテーブルを出したりして、歩いて巡ろうという気持ちにさせてくれます。中でも目に留まったのは、「緑と花のおもてなし空間」。企業や団体が花壇の世話をし、市民がスポンサーになってそれを支える形の市民花壇で、ゆったりした気持ちで散策することができました。

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姫路市ではこの駅前について、市民参加のプロセスを積極的に取り入れ、専門家や行政が緊密に情報交換をしながら設計や工事を進めていったそうです。たしかにハコモノっぽくなく、商業主義でもない空間で、まちが生きていることが伝わってきました。しかもエリアによって素材や造形を変えているので、訪れた人を楽しませてくれます。姫路城に行くときは、こちらにも注目してみてください。

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